青空に乾燥機

青空に乾燥機

 関西も梅雨に入った。最近は週間予報が気になるようになった。
「明日は雨、ところによっては大雨に注意してください」というような天気予報を、ここ2日ほど続けて前日の夜に聞いた。朝起きてみると確かに太陽は雲の向こうにうすぼんやりとしか見えず、「これから雲が厚く黒くなってくるのかな」と、朝のテレビの天気予報もチェックして考える。そして妻は仕方なく、「乾燥機」で洗濯物を乾かすように洗濯機をセットして、仕事へと出かける。
 いつの頃からか心に住み着いた「鬱」というやっかいもののせいで休職を繰り返し、結局今年の3月には退職した。結婚前から定職を持つ妻と仕事を交換したような形で私は春から専業主夫となったて家事全般を請け負った。
 まず第一に取り組んだ改革が「節約」だった。妻の定職があるからやっていけるものの、収入は今までの半分になった。「節約できるものはすべて節約していく」という事で、「それはやりすぎだ」と家族から受ける非難も気にせず、一人であれと突っ走っている。
 「とにかくコンセントは抜く」に始まった電気の節約はとうとう「私がブレーカーを管理する」というところにまで発展した。
 掃除や料理に関しては、私の自由がきくようになった。ところが洗濯の領域にはなかなか手が出せない。いくら仕事を交換したとはいえ「自分の汚れものは触ってほしくない」という妻と家族(私以外全員女性)の意見には逆らえなかった。
 というわけで、昨日に続いて今日も乾燥機が、元気よく洗濯物を回している。昨日もそうだったが掃除を終えて買い物に行く頃になると天気予報はどこかへ行ってしまい、雲が切れ真っ青な空と暑いくらいのお日様が顔を出す。しかも乾燥していてジメジメもせず、気持ちのいい一日、まさに洗濯日和だ。なのにうちの中では乾燥機が回っている。
 天気予報では「これから雲が来る」というようなことを言っている。それが足かせとなり、「途中で乾燥機を止めて後は干して乾かす」という決断ができずにいる。もし干した途端雲が広がってぽつりとでも落ちてきたら、思いっきり後悔はするだろうし、家族からは非難されるだろう。仕方なく、「今日はもう思い切って乾燥機に任せる」と決めた。それでもつい、ベランダから青い空を見上げてしまう。セコイ話だが「電気なんか使わなくても十分気持ちよく乾いたのになぁ、お日様の匂いのする洗濯物の方が余程いいのになぁ」とつい、哀しくなってしまう今日このこの頃である。